2021.02.09

ALL YOURS的、普段着考

スナックミー

普段着ているものが自分らしいと、日々の暮らしもより洗練されるはず。しかし、そもそもの「自分らしい」状態って、どういうことだろう。

似合うという概念だって、そもそも曖昧だ。そこで、なかば哲学的な「個性」へひとつの解を出している「ALL YOURS」の木村さんに、スナックミーメンバーのスタイリングをお願いしてみることに。

みんな自分だけの文脈を持っている

某日、東京・池尻大橋駅から路地を進んだ場所にある、「ALL YOURS(オールユアーズ)」の店舗を訪れた。

白い暖簾が掲げられた入り口の先には、無機質さと混沌が入り混じったような店内。壁沿いに試着用のアイテムがずらりと並び、奥の壁際にはなにやら興味深い背表紙の本が多々……。

そんな場所で出迎えてくれた、代表の木村さんに「スタイリングをお願いしたい」と主旨を伝えると、ちょっと不思議な会話がはじまった。

「服部さんは、これまでどんなキャリアを歩んできたんですか?」

「中島さんがデザインを始めたのは、いつからですか?」

服の話かと思いきや、どう生きてきたかを、目を輝かせながら興味津々で聞いていく木村さん。

「その人の持っている文脈を聞きたいんです。おしゃれが好きな人、反対にどちらかというと無頓着な人も、どんな風に考えて生きてきた結果、今ここに行き着いているのかを聞くことに意味があると思うので」

文脈がないところから「流行りだから」「おしゃれだから」とスタイルを勧めるのは、ALL YOURS的ではない。それでは借り物みたいになってしまうから、ブランド側がストーリーを押し付けるのではなく、「その人」にとって価値のあるものを提案したいという考えだ。

「お二人のお話を聞いてみると、どちらもシンプルな服装が好きとのことだけど、服部さんは“考えるのがめんどくさいからシンプルがいい”だし、中島さんは“上質なものが好きで、年を重ねるごとにシンプルが好きになってきた”ですよね。

ALL YOURSの服を着てもらうにしても、そういう“どっち側から来たか”で、提案内容が全然違うんですよ」

服だけで個性を主張しなくてもいい時代

ALL YOURSの心は、「あなた中心」であること。だからこそ、ラインナップはどれもシンプルでオーソドックス、基本はユニセックスで、サイズ感で選んでもらう形式だ。

「その人の“文脈”によって、ジャストサイズがいいのか、ワンサイズ上げてゆったりとさせた方がいいのかを考えます。

それから、おしゃれが好きな人とは一緒にあれこれ悩みながらスタリングするけれど、そうじゃなくとにかく着やすさや機能性を求める人には端的に『これで!』って提案する。
そういうのがお客様の個性を大事にすることだと思うんです」

木村さんには、「個性」に対するこだわりがある。「個性的なファッション」と形容されるように、服は、いつの時代もその人の個性を示すための重要なツールだった。

しかし、インターネットやSNSがスタンダードとなった現代では、直接会わずとも、自分の個性を表現しうる環境が整っているとも言える。そんな世界での個性は、「服に縛られないこと」でも可能性を広げることができるのではないか、と。

「例えば、ネット上では結構トガッた発信をしている人に実際に会ってこんな(ALL YOURSの)服装をしていたら、なんかギャップでめちゃくちゃ感じよく思えたりしそうじゃないですか(笑)そういう、“インターネット時代のワークウェア”が、ぼくらのコンセプトです。

ALL YOURSが着心地に徹底的にこだわっているのも同様で、その人が、普段の生活でその人らしい身のこなしをできるようにするため。個性ってそういうことだと思うから」


SELECT ITEM

左から順にスナックミーデザイナー中島、オールユアーズ木村さん、スナックミーCEO服部

服部のアイテム
ワンスウィングパーカー(グレー)*現在はお取り扱いしていません
ハイキックジーンズ

中島の着用アイテム
キテテコ ロングスリーブTシャツ / ブラック*現在のお取り扱いはダークネイビーのみ
着たくないのに、毎日着てしまう パンツ/ キャメル


-profile-
木村 昌史 
株式会社オールユアーズ代表取締役。特別な日のためではなく、日々の暮らしのための服として、生活に寄り添うファッションブランド「ALL YOURS」を運営。

※本インタビューは発行当時の掲載内容に一部修正を加えています。

取材・文=山越栞

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