暑中お見舞申し上げます。
お元気ですか?
こちらは色々大変ですが、なんとかやっているから安心してください。
今年の夏はそっちに帰らないことにしたので、水ようかんを贈ります。
お父さんにもよろしく。身体に気をつけてね。
実家宛の暑中見舞いに一筆書き添えてボールペンを置き、なんとも味気ない文章に、やれやれな気分になった。
とはいえ私がこんなことをするようになるなんて、大人になったなぁとも、我ながら感心する。
折に触れて思う「大人になったなぁ」は、不思議な感覚だ。
かつて大人に見えていた大学生のお姉さんと同じ歳になったときは、思ったよりも幼稚な自分に「なぁんだ」と思ったし、初めて御祝儀袋を包んだときは「おままごとみたいだな」と、やけに冷静になってしまった。
さすがに今は、見た目も世間的にも、もう十分に大人になっていることは重々承知している。
でもそうなのだ、たまに、自分が大人のおままごとをしているような気分になる。
大きくなった大人の身体を、子どもの自分が中で操縦しているような。
などなど考えながら、ちゃっかり自分用にも買った水ようかんを冷蔵庫から取り出してきた。
誰かに贈るものを選ぶのは、自分で食べたいものを選ぶときとはちょっと違っていて、それもまた楽しい。
なんとなく、両親がこれを気に入ってくれるような気がして、自分では普段食べない水ようかんをチョイスした。
考えてみれば、子どものころは小豆の味に惹かれた記憶ってそんなになかったかも。
しっとり茶色いかたまりをつるんとお皿に乗せて、一口すくう。
派手じゃないけれど、どこか印象深いような、優しい甘さ。
子どもとも大人ともちがう、今の味がした。
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