ゲストといっしょにおやつを囲んでフリートークを楽しむ企画。
おやつに関係ある話も、全く関係ない話も飛び交います。
おやつを食べているときって、そんなものなんじゃないだろうか。
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-夏の一大イベントといえば花火大会ですが、今年は予期せぬ事態で全国的に中止となっています。でも、やっぱり花火を楽しみたい…と思って、今日は山縣さんに線香花火の楽しみ方を教えてもらいにきました!
夜空に上がる大輪の花火が見られないのは残念だよな。あれは日本人の心だから…。
だけど、線香花火の火花の移ろいをじっくりと見るのも情緒だね。「線香花火の一本の燃え方には『序破急』があり『起承転結』があり、詩があり音楽がある」って、随筆家で物理学者の寺田寅彦博士が言葉をのこしているんだよ。
-素敵ですね。あのオレンジ色の小さな火花を見ていると、確かにそんな気もします。
歴史を遡っていくと、線香花火が生まれたのは江戸時代。でも実は、1998年に国産の線香花火は一度絶滅したんだ。
-そうだったんですね。日本の夏の風物詩なのに……。
当時は中国からの輸入品が増えていって、国内で線香花火生産者がどんどん廃業してしまった。今も、みなさんがスーパーなどで買う花火セットはほとんどが中国産だよ。
同じ売場に置いてあっても日本産の花火は割高に感じてあまり手を出さないかもしれないけど、実際に火を着けてみると全然違うはず。それを一度経験してみてほしいね。
-花火が国産かどうかを気にしたこと、ほとんどありませんでした。
そうでしょう。でも、花火してて「あれ、もう火が消えちゃった」と思うことってないかい?実は、輸入の段階で花火には火薬の量に規制があって、日本産の線香花火の方が長い時間楽しめるんだよ。と言っても、日本の線香花火に入っている火薬の量もほんの0.1グラムだけどね。
線香花火って、火が着いてから玉が落ちるまでの間に名前があって、初めにできる赤い玉は「牡丹」、次に激しく火花を散らす「松葉」、細長い火花になって「柳」、消える直前のチカチカが「散り菊」。これはよく人の一生になぞらえたりもするね。
日本産の線香花火復活の品として生まれた「大江戸牡丹」は、その様が美しくて粋なんだ。
-花火大会に出かけられない今年だからこそ、国内産のちょっと贅沢な線香花火を手に入れるのもいいですね!
そうだね。線香花火なら煙や音も少ないから、気軽にできるしね。
ちなみに同じ商品でも玉が落ちるまでの時間が違うのは、一本一本、火薬を乗せた和紙を手で撚り合わせているから。どうしても微妙に差が出てくるんだよ。
-子供のころに、誰が一番長く線香花火を燃やせるか競ったことを思い出しました!てっきり、手を揺らさずに上手に持てると長く火がついてるのかと……
これも、運試しだな。ちょっと裏技を教えておくと、火を着ける前に線香花火の火薬が入っている部分と、入っていない部分の境目を手で軽くよじっておくと、玉が落ちにくくなるんだよ。
-へー!すごく線香花火がしたくなってきました。
線香花火っていうのはさ、親子の絆を深めたり、仲間と楽しんだりできる夏の風物詩。花火が燃えているあの時間ってやっぱりいいもんだよ。
線香花火の燃え方
-profile-
山縣 常浩
大正3年創業、東京都台東区蔵前の玩具・花火問屋の山縣商店五代目。一度は途絶えてしまった日本産線香花火の生産復活の立役者として「大江戸牡丹」を完成させた。株式会社 山縣商店
https://www.hanabiya.co.jp/
東京都台東区蔵前2-2-2
TEL:03-3862-3927
オンラインでも玩具・花火を販売しています
取材・文=山越栞