
街が、黄色い。
夏が過ぎ、秋が訪れ、冬を迎えるこの一連の時期に、毎年思う。
今年もまた同じように、黄色の世界がやってきた、と。
厳密に言えば黄色だけじゃなく、オレンジと茶色と紫色も含んだ世界だ。ちなみに紅葉のはなしをしている訳ではない。
芋、栗、かぼちゃ、そしてハロウィン。いつも立ち寄るコンビニにそんな文字が踊り、お菓子コーナーで幅を利かせる。
そして「ここは日本だろ」と悪態をつきたくなると毎回、妻と付き合い始めた頃を思い出す。
「ここは日本だろ」といってクリスマスをないがしろにしたら、随分怒られたっけ。
あのときに散々文句を言われて、挙げ句に5℃だか3℃だったかのネックレスを買わされたことに関しては、未だに納得がいっていない。
しかし納得はせずとも、人と関わっていくということはそういうものだと半ば諦め、翌年からは彼女が言い出す前に何か贈り物を考えるまでの急成長をとげた。
のちに渡すものが指輪になり、家族が増えた今でも、やっぱりそういう類のモヤモヤは消えていない。
妻と、3歳になる娘を見ていると「女性はいいなぁ」と思う。
クリスマス、ハロウィン、ティラミス、タピオカ、などなど。そういう類の楽しみを柔軟に受けて、楽しそうにしているのだから。
去年初めて幼稚園のハロウィンパーティへの参加を果たし、嬉々として「あのね、あのね」と思い出を話してくれる娘を見て、ふと冷静に「まるで社交界デビューだな」と思った。
これからこの子はちゃんと流行りにのっかり、友達や恋人と「今」を楽しんでいくのだろう。
そう思った矢先の今年だ。
自粛ムードの中で、去年ほどハロウィンを謳歌できない娘はさぞ残念がるだろう。
などと考え、ここは父親として代替策をとらねばと思いながら、リビングでコーヒーをすする日曜日の朝である。
なるほど、カフェ各所ではハロウィンフェアをしているのか。などとスマホを覗いていると、
「ちょっとパパ、そんな女子みたいなもの調べて何?浮気じゃないでしょうね?」
なんて、元・女子の権化がからかってくる。こちらの気も知らないで、ひどい。俺だってモンブランやパンプキンタルトくらいは食べてみたいかもと思いかけていたところだったのに。
そこへ娘が駆け寄ってきて、
「パパ~!芋けんぴ食べる?」
である。
そんなものも食べられるようになったのか。
娘よ、渋いぞ。
なんだかんだで我が家は今日も平和です。
文=山越栞