2021.02.16

【オヤツヲタベツツ】MAIN TENT フランソワ・バチストさん

スナックミー

ゲストといっしょにおやつを囲んでフリートークを楽しむ企画。

おやつに関係ある話も、全く関係ない話も飛び交います。

おやつを食べているときって、そんなものなんじゃないだろうか。


-まずはお店を始めたきっかけを伺いたいです。ダンサーとしてのご活動の傍らで、絵本やお店づくりに思い入れがあったのでしょうか?

私にとって『MAIN TENT』は、ストリートシーンで出会った様々な人や音楽、映像、舞台にファッションなどから受けた刺激の出口の集大成なのかもしれません。

『MAIN TENT』というフィルターの向こう側にあるのは、ミシェル・ゴンドリーだったり、ボブ・フォッシーだったり、ティム・ウォーカーだったり…。その中でたまたま「絵本」という出口の先に、光が見えたのだと思います。

きっかけは、ある日ふと「絵本専門の古本屋さんがあったら面白いな、まだ世の中にはないんじゃないかな」と閃いたこと。実際には既に世の中にあったわけですが、その時の閃きが強烈で、そこに自分がぐるぐると引き込まれていきました。

-バチスト氏にとって、それだけ絵本という存在が身近だったということでしょうか?

はい。私にとって絵本は外側にあるだけでなく、自分の内側にあるものでした。富士の麓の森の中で過ごした幼少時代は、拾った薪を斧で割り、薪ストーブにくべ、植物学者の祖父の庭で絵を描き、木工職人の父の作った家具に囲まれ、母の焼いたマドレーヌをおやつに食べる日々。

嘘のような、外の世界から離れた絵本のままの世界で育ちました。絵本に出てきた美味しそうなおやつはほとんど作ってもらった気がします。お話と現実との境界線は、とてもゆるいまま大きくなりました。

-すごいです…そんな夢のような素敵な幼少期が、こだわりのつまった『MEIN TENT』さんの空間づくりに紐付いているように思います。

『MAIN TENT』の世界観や空間づくりには、言い尽くせないほどのこだわりが詰まっています。大事にしているのは子どものために目線を下げるのではなく、大人の世界を子どもが覗くようなイメージ。

もちろん、絵本は子どものためのものです。大人が子どもたちに「この世界はこんなに美しくて、楽しいのだよ」ということを伝えるものであって欲しいです。

まぁ、そもそも自分を大人だと思うかどうかも疑問ですけどね。当店には0歳から100歳までの子どもがたくさんいらっしゃいますので。

-確かに、「どこからが大人なんだろう」と考えることはあります。自分の中の子どもの部分は、例え大人になっても持ち続けているというか…。

そう。大人になっても、子どもの部分はマトリョーシカのようにいつまでも自分の内側にあり続けるはずです。だから大人が絵本を手に取ることは、子どもの感覚を取り戻すための、催眠術の最初の儀式みたいなものだと思っています。

そして、大人にとっての絵本は、いつまでも子どもでいるための免罪符とも言えるかもしれませんね。

-バチスト氏の考える、絵本との理想的な付き合いってどんなものでしょうか?

極端な話、読まずに絵画の1つとしてそばに置いておくだけでもいいと思っています。絵本の強みは、賞味期限がないこと。暇で暇でしょうがないときだっていいので、それぞれのタイミングで読んでいただくのがいちばんです。

子育て中の親御さんは特に、「いま子どもに読ませたい」と絵本を買ってあげることもあるかもしれません。でも、子ども時代って全速力で駆け抜けているみたいなものなので、その子が興味を示すタイミングに委ねるのも大切ですよ。

-なるほど…。そう思うと、絵本をもっと自由に楽しめるように思えてきました。最後に、素敵な絵本と出逢うための秘訣があれば教えていただきたいです。

本選びって、砂山をつくるみたいなものだと思うんです。裾野が広くないと安定しない。だから、家の本棚に名作しかないっていうのは、ものすごくグラグラした塔を建てようとしていることに似ていて。

もっと、パン屋さんでパンを買うくらいの気軽さで、自分の感覚を信じて本を選ぶといいと思います。語弊を恐れずに言うと、いい本じゃない本が本棚にどれくらいあるか、というのが私は重要だと思っていて。「いいもの」を見極める目はもちろん大事だけど、それはそもそも、失敗を恐れずにやってみないとわからないものですから。

『MAIN TENT』推薦 おやつの時間に読みたい本

『おやまのこぐま』
(小学館) 浜田 廣介 (著) 西村 達馬 (イラスト)
世にも珍しい、おいしいおいしいくりきんとんの絵本

『おやつがほーいどっさりほい』
(新日本出版社) 梅田 俊作/梅田 佳子 (著) 
もしかして、もしかして、とドキドキしながら読める一冊。やっぱり!なんだけど、終わり方もあたたかい

『おひるねじかんにまたどうぞ』
(えほんらんど 1) 武鹿 悦子 (著) 西巻 茅子 (イラスト)
なんとなく全体的におやつの甘い香りの漂う絵本


profile

MAIN TENT
東京都武蔵野市吉祥寺本町2-7-3
営業時間:平日 10:30~17:00 休日 10:30~19:00
定休日:水曜日
http://maintent-books.com
※郵送での販売ほか、絵本・児童書の訪問、郵送買取りも承っています。

フランソワ・バチスト
ダンサーや演出家として活動しながら蒐集した絵本をもとに、2015年東京の吉祥寺にて絵本・児童書専門の古書店『MAIN TENT(メインテント)』をオープン。全国から訪れる0~100歳の子どもたちへ「本物の絵本」を届けている。

※本インタビューは発行当時の掲載内容です。

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