2021.02.18

【オヤツヲタベツツ】LIGHT UP COFFEE 川野 優馬さん

スナックミー

ゲストといっしょにおやつを囲んでフリートークを楽しむ企画。

おやつに関係ある話も、全く関係ない話も飛び交います。

おやつを食べているときって、そんなものなんじゃないだろうか。

-今回は、「コーヒーと発酵」をテーマにお話を伺いたいです。
LIGHT UP COFFEEでは発酵に着目したワークショップも開催されていましたが、そもそもコーヒーが発酵して作られたものだということって、それほど知られていない気がします。

そうですよね。でも、美味しいコーヒー豆ができるまでには、発酵は必要不可欠なんです。

-コーヒーの発酵は、どの段階で行われるのでしょうか?

コーヒーは、コーヒーチェリーと呼ばれる赤い実を農園で育て、種の部分を取り出すことでコーヒー豆の状態になります。発酵の工程が入るのは基本的にこのときです。

種を取り出す方式は「ウォッシュト」と「ナチュラル」があるのですが、簡単に説明すると「ウォッシュト」が、コーヒーチェリーの皮を剥いた後、発酵させて実の部分を取り除きやすくし、洗い落とす方法。

皮を剥いただけだとコーヒーの実の部分はドロドロなので、その状態でまとめて置いておき、発酵させます。すると微生物が糖を分解してくれて、実の部分が水っぽくなる。それでやっと種実を洗い落とすことができるんです。

もうひとつの「ナチュラル」は、皮を剥かずに乾かしてから脱穀するやり方。これも、乾燥台に置いておくと中の微生物が糖を食べてくれるので、自然と発酵が起きています。

-なるほど、皮がついた状態からコーヒー豆の部分を取り出すのには、発酵が必要なんですね

そうなんです。LIGHT UP COFFEEでは発酵とコーヒーの味の関係を研究しているのですが、pHが4を下回るまで発酵が進むと、ツーンとする嫌な匂いが出てくることを確認しています。世界的にも、コーヒーを作っている人たちの中ではpH4くらいまで発酵させるのがスタンダード。

発酵を適当にやってしまうとフルーティーさが出なくなってしまうし、種の周りの糖分が溶けきらず、スッキリした味にならないんです。

-コーヒーのフルーティーなフレーバーが、発酵と関係していたなんて…!
となると、シングルオリジンのコーヒーだと更に発酵を重視していたりするのでしょうか?

そうですね。シングルオリジンは農園や作り手ごとのこだわりを伝えるために個性を出してコーヒーを作っていくので、特に発酵が意識されています。

シングルオリジンに力を入れている農園に行くと、その日の気温によって発酵の進度が違うのを分かった上でpH計を導入していたり、舌で舐めてみて「こういう味がしたら発酵が丁度いい」など農家さんが独自のやり方で確かめていたりします。

もうちょっとつきつめている最近の農園だと、シャンパンやビールのイースト菌、乳酸菌など、独自に選んだ菌を添加してコーヒーの実を分解していたり、酸素がある条件下とない条件下では発酵の経路が違うので、あえて酸素を追い出したタンクの中にコーヒー豆を入れて発酵させているところもあります。

-コーヒーの味に個性を出すのにも、発酵へのこだわりが大事なんですね。
ところで気になったのですが…菌によってどのようにフレーバーが変わるのでしょうか?

僕らが一緒に組んでいるベトナムの農園では、シードル(りんごのお酒)に使う酵母を添加して発酵させてみたところ、パイナップルやマンゴーなど南国フルーツのようなフレーバーが出てきました。

他のところだと、乳酸菌を使っている農園がパナマにあって、そこは乳酸菌らしいヨーグルトみたいなフレーバーですね。
ただ、こんな風にユニークさを出していこうとしている農園は全体の0.1%以下だと思います。

-世界的にトップレベルの農園こそ、発酵に着目しているということですね。
ちなみに、私たちが発酵にこだわったコーヒーを楽しむには、どう選んだらよいのでしょうか?

発酵によるフレーバーが際立っているのは、「ナチュラル」のプロセスで作られたものですね。果肉がついたままだと発酵が進みやすいので、イチゴやラズベリーみたいなフレーバーのコーヒーもあります。

ナチュラルプロセス以外でも、発酵にきちんと気を遣い、大量生産でないものもあります。少なくともちょっと酸味があって、オレンジっぽいとか、リンゴっぽいなどと謳われていることが多いですね。

-なるほど……。なんだか、これからコーヒーのフレーバーを選ぶのがより楽しくなりそうです!

面白いですよね。なにはともあれ、僕たちがコーヒーを飲んで感じるフレーバーは、全て発酵に左右されているんです。

厳密に言えば、豆に含まれる糖分や水分量、土壌によって持っている微生物の違いなどもあるのですが、だとしてもコーヒーの味には全て発酵が関係しているといって過言ではありません。

今後コーヒーを選ぶ機会があれば、ぜひそんな部分も知って楽しんでみてくださいね。


-profile-
LIGHT UP COFFEE
https://lightupcoffee.com

吉祥寺店
東京都武蔵野市吉祥寺本町4-13-15

下北沢店
東京都世田谷区代田2-29-12

※当面の間、「本日のコーヒー」「カフェラテ」を持ち帰りのみで
吉祥寺店 11:00~18:00
下北沢店 12:00~17:00の短縮営業

川野 優馬 
自家焙煎コーヒーショップLIGHT UP COFFEE代表。丁寧に作られたコーヒーの個性豊かな素材の魅力を発信している。2020年にはsnaq.meでコラボレーションし、コーヒーバックを限定商品として販売。

※本インタビューは発行当時の掲載内容です。

取材・文=山越栞

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