
-今号は「子どもごころ」をテーマにしているので、クオッカちゃんのぬいぐるみを製作しているハタヤさんにお話を聞かせてもらいたいと思いました。さっそくなのですが、始めたのはいつ頃からなんでしょうか?
3年前です。友達と飲みに行った帰り道をひとりで歩いているときに、とつぜんお告げみたいな言葉が降ってきたんです。「あなたはぬいぐるみを作るべきだ」って。
-えええ!
なんだかスピリチュアルな感じになってしまうんですけど…ホントなんです。それで「これは作らなあかん」と思って。
ぬいぐるみは全て手縫いなのですが、当時はボタンをつけるくらいしかできなかったので、独学でのスタートでした。
-そんな特別なきっかけがあったのですね…。最初から、作るものはクオッカちゃんと決めていたのですか?
はい。モデルになっているのはオーストラリアに生息するクオッカワラビーです。元々大好きで、イラストを描いていたんですよ。でも、気軽には会えない地域に生息しているので、だったら作ろうって。

それにアニメや漫画もずっと好きなので、例えば『風の谷のナウシカ』のテトみたいに、主人公の肩に乗ったりしていつもそばにいるキャラクターをイメージしてもいます。
実際に販売したのは作り始めてから4か月後くらいで、大阪の昭和町というところで毎年開催しているイベントに出店しないかと声をかけていただいたのがきっかけでした。
-そのときの反響はいかがでしたか?
ぬいぐるみを作っていることをSNSで伝えていたので、販売開始前から待ってくれていた方々がいたんです。その中には知り合いじゃない人もいて、「こんなことあるんや」とびっくりでした。
-このかわいさですもん、SNSで見かけたら虜になってしまう気持ちもわかります。生みの親であるハタヤさんご自身は、クオッカちゃんをどう捉えているんでしょうか?
みんな自我があるんですよ。ぬいぐるみなんですけど、距離感としてはもうひとり生き物がいる感じです。

我が子というよりは、親しい友だちとして、そこに生きている存在を扱っているところがあります。なんだろう…クオッカちゃんたちが、内から何かを発してるような感じがするんです。
-でもたしかに、小さい頃に大事にしていたぬいぐるみのことを思い出すと、「モノ」としては見ていなかった気がします。
うんうん。それにぬいぐるみって、その人によって距離感を自由に作れるのが良いなと思うんです。家族だったり、居候している生き物だったりと、それぞれにとってのちょうどいい距離感で付き合ってもらえたら嬉しいです。
-では、作るときに心がけているのはどんなことですか?
手縫いなので、ひとつとして同じものはできないからこそ、毎回「この子が世界で一番かわいい」と思いながら作っています。つまり「一番かわいい」をたくさん作っていることになりますね(笑)。

-となるとなおさら、買う人にとってはどの子を選ぼうかと幸せな悩みが生じそうですね…!
実はイベント販売のとき、お客さまがそんな風に迷われている姿を見ているのがとても幸せなんです。
-ハタヤさんご自身にも、小さい頃のぬいぐるみエピソードはあったりしますか?
はい。私には8歳のときに生まれた妹がいるのですが、8歳って、割と自我が芽生えつつもまだまだ甘えたい時期じゃないですか。
それでお母さんが、丸くてふわふわのフクロウのぬいぐるみを買ってくれて。名前をつけて、寂しいときもいつも一緒にいてくれる存在になっていたんです。
今も部屋に置いているのですが、ずっと一緒に年月を重ねたからこそ唯一無二になった大切なぬいぐるみです。
クオッカちゃんも、誰かのそういう存在になれたら嬉しいですね。
-これからやりたいこと、思い描いていることはありますか?

遠い目標だと、おばあちゃんになったら住所非公開の「クオッカちゃん屋さん」をやりたいなと。そこへふらっと呼び寄せられた人に「よく来たね」って言いたい(笑)。
それよりもう少し近い将来だと、企業様とコラボしたり、ストップモーションアニメなどにもできたらいいな。
-素敵です。ちなみに大人気のクオッカちゃんですが、手に入れたい場合はどうすればいいでしょうか?
ありがたい悲鳴なのですが、今は欲しいと言ってくださる方に対して手が追いついていない状態で…でも、ぬいぐるみの販売はずっと続けていきたいので、オンラインなどで手段を増やしたいとは思っています。

いかんせん手縫いなので、数を一気にたくさん作ることはできないのですが、作り続ければ届くべき人にはいつかちゃんと届くんじゃないかなと。
-では最後に、ハタヤさんが思う「子どもごころ」とはどんなものか教えていただけますでしょうか?
子どもごころって、誰しも絶対に持っているものだと思うんですよね。
大人になっていくにつれていろんな経験が積み重なって、考え方や好きなものがどんどん増えたりもするけれど、それらの土台になっている純粋なものが、子どもごころなんじゃないでしょうか。

-そう考えるとぬいぐるみって、根底にある子どもごころを思い出させてくれる存在なのかもしれませんね。
そうですね。かわいいものや好きなものを見ると、その人の持っている純粋な心が動きますもんね。そういう、まっさらな気持ちも大事にしたいですね。
取材・文=山越栞
おまけ

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