
ゲストといっしょにおやつを囲んでフリートークを楽しむ企画。おやつに関係ある話も、全く関係ない話も飛び交います。
おやつを食べているときって、そんものなんじゃないだろうか。
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加藤:村田さんにはsnaq.meでご好評いただいている「焼きマンディアン」を一緒に作っていただいて…あのときのスピード感は本当に気持ちよかったです。ありがとうございました。
村田さん(以下、村田):スピード感を大事にするのは、フランスのパティスリーで働いていたときに身についたことです。アルザスの伝統菓子を学んでいたのですが、仕事の仕方についても刺激をもらうことが多くて。
労働時間が長いと言われる日本人に対し、フランス人にとってはバカンスも大事。だからこそ、まとまった時間にとにかく集中して働いて、スピーディかつ丁寧に仕事をする力が求められるんです。
加藤:実はスナックミーでもスピードは大事にしていて、「考える前にまず行動する」というルールがあるくらいなんです。完璧主義になるのではなく、やっているうちに色々な答えを見つけられればいいのかな、と。「美味しい」は大前提ですけどね。
村田:何事も行動してみることがご縁につながりますよね。いまnel でショコラティエをしているのもそうですし。
加藤:そういえば、村田さんはどんな経緯でnelのショコラティエになったんですか?
村田:フランスから帰国して、その前に働いていた洋菓子店の社長に声をかけてもらい、1年ほど日本に戻って働いていたんです。でももう一度ヨーロッパで働きたいと思って、働き口を探すことにしたんです。
そしたら、SNSからの繋がりで運よくビザを出して1年働けるパティスリーを紹介してもらえることになって。それがルクセンブルグという国でした。
フランス・ドイツ・ベルギーに囲まれた小国で、1時間もかからず他国に行き来できるので、仕事以外の時間を有効に使うことができました。
それで海外生活も十分満喫できたので、日本に戻る事にしたんです。そうして帰国後縁あって繋がったのがnelの母体となっているUDS(株)でした。デザインや設計を手掛けている会社がチョコレートショップをはじめると聞き、「なんだかおもしろそうだな」と。
デザインや空間設計は私がジョインするまでにほぼ完成していたので、あとは店のコンセプトにあう商品を生み出すだけ。商品開発はゼロからのスタートで日々試行錯誤の繰り返しでしたがいま思い返すと楽しかったですね。

加藤:それこそご縁ですね。もう一度ヨーロッパでお菓子作りを学びたいとは思いますか?
村田:いや、やりたいことは出来たので、いまはnelとして面白いことができたらいいなと思っています。
加藤:楽しみだなぁ。実は、僕の両親はフランスでお菓子屋さんをやっていたんですよ。僕は日本で生まれたんですが、小さい時からフレンチを食べさせてもらったり、カップラーメンを食べると「フレンチのコースとこの100円のカップラーメンの美味しさの違いは何か?」って聞かれたりして(笑)
村田:サラブレッドじゃないですか。
加藤:うまいこと食育してもらったかもしれないですね(笑)ずっと食に関わる仕事をしてきたのですが、だからこそ村田さんのような職人さんに憧れがあって。今回snaq.meで焼きマンディアンを一緒に作らせてもらったのは嬉しかったなぁ。
村田:またあんな風にワクワクするものを作りたいですね。snaq.meの場合は、「自然な食材しか使えない」という制限があるからこその成長を感じられました。焼きマンディアンも、どうやったらユーザーさんのもとへ形を崩すことなく届けられるか試行錯誤した結果、「焼いちゃえばいいのでは?」とアイデアが出てきたんですよね。
加藤:そう言ってもらえて嬉しいです。
村田:snaq.meのユーザーさんがInstagramに載せてくれた焼きマンディアンを見て、お客様からnelにお問い合わせをいただいたこともありました。そうやってオンラインでの反響がリアルでも感じられるのは、僕らとしてもありがたいですね。
加藤:村田さん、次は何作ります?ホワイトデー用に白いマンディアンとか、春にピンクのマンディアンとかどうですか??
村田:ビーツの粉末を使ったりすれば、ピンクのマンディアンもいけそうですね。あと、ストーリー性のあるものも作りたいなぁ。
加藤:語れるおやつ、いいですよね。snaq.meでも今後そういうのを作っていきたいとずっと思っているんですけど、焼きマンディアンはそのための大きなヒントになりました。
いつかsnaq.meオリジナルのボンボンも作りたいなぁ。あと、ユーザーさんたちの間でもチョコレートのおやつは人気なんですが、溶けやすいので夏場はどうしてもお送りできないのもなんとかしたいし…。

村田:チョコレートは本当に夏に弱いですからね。実は今年やろうと思って手が回らなかったことがあって、凍ったボンボンを作りたかったんです。
そういうやってみたいアイデアはたくさん浮かぶんだけど、どうしても目先の仕事に追われてしまって…。どうなるかわからなくても、そんな風に誰もやらないことをやりたいですよね。次の夏に向けての宿題かなぁ。
加藤:宿題って言葉、なんかいいですね。そうやって「美味しい」のために試行錯誤していくのって大変だけど楽しくて。先日、スナックミーのオリジナルココアを作ったんです。次はスペシャルティコーヒーにかなり寄せて、カカオを育ててる農園まで語れたりできるといいなって。
スペシャルティコーヒーって「バリスタ」がいると思うんですけど、ココアは「ブレンダー」って言うこともあるんですって。村田さんがブレンダーだったら、どんなココアができるんだろう…。
村田:へぇ~。知らなかった。楽しみな宿題が増えそうですね(笑)
加藤:あと、プラリネも作りたいんですよね…。色々できそうで話し足りないです。村田さん、今度美味しいフレンチでも食べながらゆっくりまた話しません?
村田:いいですね。nel のお店がある浜町周辺は、フレンチのレストランやキュイジーヌもけっこうあるんですよ。
-profile-
村田友希 nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO シェフショコラティエ
京都市内の洋菓子店にてパティシエとしてスタート。その後、京都 福知山市「洋菓子マウンテン」に勤務しワールドチョコレートマスターズ2007総合優勝の水野直己氏に師事。2012年よりスーシェフを務める。2014年よりフランス、ルクセンブルグのパティスリーにて勤務し伝統菓子を学ぶ。帰国後、nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO開業にあたりシェフショコラティエに就任。
※本インタビューは発行当時の掲載内容です。
取材・文=山越栞