2021.04.01

りんごの木

スナックミー

りんごの木のしたにすむ、おじいさんがおりました。

おじいさんはりんごがだいすき。

きせつがやってくると、りんごの木はまっかな実をたくさんつけて、おじいさんをよろこばせてくれるのでした。

しかしあるとき、おじいさんはかんがえました。

「もっとおいしいりんごがあるんじゃなかろうか、それをしらないままに、わしはしんでいきたくないぞよ」

すると、どうでしょう。

どこからともなく、ようせいがやってきて

「それでは、もっとすてきなりんごをさがす旅におつれしましょう!」

ようせいがチチンプイプイとまほうをかけると、まるで砂嵐のように、あたりのけしきはあっというまにふきとんでしまいました。

あわててかおを覆ったおじいさんがつぎに目をあけたとき、そこはしらないばしょにかわっていました。

ふと見上げると、みたこともないようなりんごの大木の下にいたのです。

木には、たいそうりっぱでおおきなりんごが実っていましたが、枝がたかくて、おじいさんがいくらせのびをしても、ジャンプをしてもとどきません。

そうこうしているうちに、幸運なことにりんごがひとつ、おじいさんの足元にポトリ。

「ありゃ、おちたしょうげきで潰れてしまっているじゃないか。いくらいいりんごでも、おいしくたべられなきゃ、意味がないよ」

するとまた、どこからともなくようせいがあらわれました。

「では、こちらはどうでしょう?チチンプイプイ!」

砂嵐がふたたびおちつくと、こんどはりんごの森につきました。

「おお、りんごの木がたくさんだ!このなかで、いちばんおいしいりんごをさがすわい」

おじいさんはそれからみっかみばん、りんごをたべてたべてたべつづけました。

よっかめのばんになって、おじいさんはふと、つぶやきます。

「たくさんありすぎて、どれがいいのかわからなくなってしまった。

あのころの、まっかなりんごの実をもうたべられずに、わしはしんでいきたくないぞよ」

するとようせいがやってきて、

「チチンプイプイ!」

おじいさんが目をあけると、

「おかえりなさい」

ようせいのこえがどこかでした気がするのですが、そこには慣れしたしんだ、りんごの木があるだけでした。

文=山越栞

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