2021.05.03

月曜日の朝に、言葉をひとさじ。|5月3日

snaq me

「あのね、ずっと家の中にいたり、同じ場所にいるからって、同じような生活をしていて、一見落ち着いて見えるからって、心まで狭く閉じ込められていたり静かで単純だと思うのは、すっごく貧しい考え方なんだよ。

でも、たいていそういうふうに考えるんだよ。

心の中は、どこまでも広がっていけるってことがあるのに。

人の心の中にどれだけの宝が眠っているか、想像しようとすらしない人たちって、たくさんいるんだ」

– よしもとばなな『デッドエンドの思い出』


少し前、お昼ごはんを食べに行こうと隣の駅まで歩いた日のことです。いつも隣の駅に行くときに通る道の途中に、お惣菜屋さんがありました。

昔ながらの、透明なショーケースにお惣菜やおむすびが並んでいるような、小さなお店です。

そのお店の前に、身だしなみの綺麗なメガネの男性が立っていました。

ああ、お昼でも買っているのかなあなんて思いながら通り過ぎようとしたら、その男性は「嬉しいなあ」とお店の方に向かって言いながら、おむすび(か何かお店で買ったらしき食べもの)を頬張っていたんです。

何だかあまりにもいい光景すぎて、すごくいいものを見たなあ、と後から何度も思い出しました。

ずっと陸続きの場所にいると、とても遠くの、日常とは切り離されたところにしか海はないと思ってしまいます。

だけど、明日、今日いた場所と同じ時間に行っても、道ゆく人も、通る車も、まるっきり同じなんてことはないんですよね。

よしもとばななさんの『デッドエンドの思い出』に出てくる冒頭の言葉には、そういう希望が詰まっていて、この言葉こそが自分の見たことのない景色が広がる場所へ連れていってくれる気がしています。

毎日同じ場所にいて同じ景色を見ているようで、まるっきり同じ状態では二度とやってこないこと。

それって、もしかしたら大きな希望なんじゃないでしょうか。

今週はGWでお休みの日が多い方もいらっしゃると思いますが、どんな方にとっても素敵な一週間になりますように!


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