“This curious world we inhabit is more wonderful than convenient; more beautiful than it is useful; it is more to be admired and enjoyed than used.”
我々が住むこの興味深い世界というのは、便利というより不思議であり、役立つというより美しいものである。それは使われるというよりは、褒められ、楽しまれるべきものだ。
– Henry David Thoreau(ヘンリー・デイビット・ソロー)
先日、近所を歩いていると、パソコン教室の入り口に「スマホ講座」の文字が目に入りました。年配の方の80%以上はスマートフォンを保有しているそうで、60分3,000円でスマホの使い方を教えますよ、という内容。
考えてみたことはなかったですが、たしかにパソコン講座があるのなら、スマホ講座があってもおかしくない時代だな、と思いました。
スマートフォンを持つようになったのはちょうど大学に入学した頃。高校時代、ひとりだけiPhoneを持っている子がいて、とても稀有な存在だったことを覚えています。
その後、街中でフリーWi-Fiが使える場所が増え、通話料のかかっていた電話もLINEの登場によっていつでも気軽に長電話ができるようになりました。
便利ですよね、本当に。10年前は考えられなかった未来にいます。
だけど、「便利になったことでしあわせになっているのか」と問われると、何て答えたらいいのか言葉に詰まってしまいます。暮らしが便利になることで、“より”しあわせになっているのでしょうか。
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20歳の頃、全く言語の通じない国に行ってみたくて、モロッコに行ったことがあります。当時はまだ今ほどgoogle mapやwifiが今のようにどこでも使える時代ではなく、到着直後から自分の向かいたい街への列車がどれなのか分からず途方に暮れていました。
モロッコの公用語はアラビア語とベルベル語。フランス語を話せるひとも多くいるようですが、まだ習いたてのわたしにとって聞き取るなんてもってのほか。
なんとか近くにいた人に話しかけてガイドブックの地名を指差して行き先を伝えると、運良く英語が話せる方だったので、車内で少しお話をしてもらいました。
そのときすごく感動したんですよね。言葉一つで相手の言っていることが分かることも、言葉が通じないひとがたくさんいることも。
わたしは生まれてこのかた、「便利な世の中」でしか生活をしたことがなかったし、無意識に世の中は便利なものだと思い込んでいたんです。
当然ながら、世の中は便利か不便かでは切り分けられません。でも、便利なものに囲まれて生活をしていると、その感覚は自然と弱まってしまいます。
つい忘れてしまいそうになったら、「この世の中は、便利というより不思議なものだ」ということ、モロッコでかろうじて覚えた「シュクラン」というアラビア語のお礼の言葉を言っただけで、魔法の言葉のように現地のひとが笑顔になってくれたこと。このことを思い出そうと思います。
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今回も最後までお読みくださりありがとうございました。
モロッコといえばかわいい雑貨が多く、日本からの旅行客も多いようで、街中に行くと日本語を話せる方も結構いました。大体客引きなので気をつけなければいけなかったですが、一昔前のお笑い芸人の方のネタを披露してくれていたりして、誰かが仕込んだんだろうなあ、と何だかにやにやしていました。
文=ひらいめぐみ
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