“ Out of your vulnerabilities will come your strength .”
あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる。
-Sigmund Freud(ジークムント・フロイト)
最近、弱さについていろいろと考えていました。
英語には「ヴァルネラビリティ」(vulnerability)という単語が存在します。単純に「弱さ」と訳されることもありますが、一般的には「脆弱性」、ときに「攻撃誘発性」という訳になることもあります。
そのヴァルネラビリティとは何なのか、という問いに対する答えが書かれている本の一節を、ふと思い出しました。
“わたしはふと、「あ、そうか、「隙がある」とか「つけ込まれやすい」というのがまさにヴァルネラブルということなんだ」と思いたったのである。そのもの自身が弱いわけではない。ただ防御力に乏しく、その結果として攻撃を受けやすい状態。(中略)ヴァルネラブルな人が危険なところをのんきに歩いていると、周囲の人ははらはらして、その人に怒りを向けてしまいがちになる。純粋に他人を信じ、だれにでも心を開いてしまう人にたいしても同様だ。とくに自分の弱点を攻撃されたことがあり、それ以来重い「鎧」をつけて歩いてきた人にとっては、弱さをさらけ出したまま生きている人を見るだけで、「甘えている!」「世の中をなめている!」といらだたしくなったりもする。”
宮地尚子(2010)『傷を愛せるか』、大月書店、p.104
このあと筆者の宮地さんは、どれだけ鎧をつけても、人や社会はヴァルネラビリティから逃れられないと語ります。精神科医である彼女は、病気やけが、障害、老いといった不確実さと向き合う医療現場に身を置かれているからこそ、より一層そのことを体感してきたのかもしれません。
そもそも、生きることはヴァルネラビリティがはらんでいるということ。
それはつまり、弱さを抱えながらしなやかに生きていくことを模索し続けるということでもあります。
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自分の弱さを認めてあげることができないのは、きっと世の中すべてが強いものに見えてしまっているとき。
でも本当は不確実なことだらけで、「明日がどうなるか分からない」という実感は、特にここ数年で誰もが感じたことだったはずです。
「弱」という字は、弧を描いた弓の状態を表したもの。弱さを抱えて生きるわたしたちは、攻撃を受けやすくとも、しなやかに受け止める強さも持っているのだと思います。
文=ひらいめぐみ
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