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わ〜い!今月も届いた!と思っても、意識せずに食べていると、ゆっくり味わうのも忘れて気づいたらなくなってしまうおやつたち。
先日実際にわたしの家に届いたおやつとともに、今回は「いつもの景色をひっくり返してくれる本」をテーマに8冊ご紹介します。
ちなみにしょっぱいおやつが好きだからか、だんだんBOX全体が茶色くなってきました。ご紹介するおやつに偏りが出てきたら、会社にあるおすすめおやつとかも今後混ぜていこうと思います。
1.『創造のレッスン』鷲田清一(筑摩書房)
2.『浮遊霊ブラジル』津村記久子(文藝春秋)
3.『都会なんて夢ばかり』世田谷ピンポンズ(岬書店)
4.『生活の発見』ローマン・クルツナリック(フィルムアート社)
5.『銀河の片隅で科学夜話』全卓樹(朝日出版)
6.『某』川上弘美(幻冬社)
7.『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』斎藤倫(福音館)
8.『地上絵』橋爪志保(書肆侃侃房)
1.『創造のレッスン』鷲田清一(筑摩書房)
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「ここにあるものを手がかりにここにないものを想う、その〈想像〉という心のたなびきがどんどん短くなっているようにおもう。」
まえがきの最初の一文を読んで、ああきっとずっと手元に置いておきたい、ときどき読み返したくなる本になるだろうな、と思いました。
「わたしたちが普段生活しているこの世界に、自分自身の感覚をどうひらいていくか」ということを考えるきっかけを与えてくれます。
本当に「想像のレッスン」だなあ。
ちいさなトピックに分かれているので、ちょっとずつ読めておやつ時間にぴったり。
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おとものおやつには、しっとりドライマンゴーを選びました。
もにょもにょとドライマンゴーを噛んでいると、自分の頭までやわらかくなってきそう。
2.『浮遊霊ブラジル』津村記久子(文藝春秋)
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同級生と温泉に行った帰りのバスの事故で死んでしまった小説家が行き着いた「物語消費しすぎ地獄」での日々を描いた「地獄」。生まれて初めて海外旅行へ行く前に急逝してしまった私が旅人たちに憑いて、憧れの地を目指す「浮遊霊ブラジル」。
さまざまな世界の中でたゆたう主人公たちを、飄々とユーモラスに表現していて、ちょっと不思議な設定にもするりんと引き込まれていきます。
こんな風に現実的に地獄の日常とか考えたことなかったな、と自分の想像してきた死後の世界のイメージがひっくり返りました。
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こちらにはコーヒー牛乳アーモンドをおともに。
ふわんとやさしいコーヒー牛乳の味に包まれたアーモンドは、まるでこの物語の主人公をまとう空気のようです。
3.『都会なんて夢ばかり』世田谷ピンポンズ(岬書店)
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今回のテーマ「いつもの景色をひっくり返してくれる本」に入れるかどうか悩んだのですが、個人的に大きな衝撃だったので選びました。
この本と出会ったのは、吉祥寺の「百年」という書店。めずらしい判型とスケッチのようなイラストに惹かれて購入し、ぱらぱらと読み進めていってから気づいたんです。
音楽をやっている方のエッセイだったんだ……!
ミュージシャンの方のエッセイは読んだことがあるのですが、音楽を聴くより先に文章に触れるという経験は、これまでほとんどありませんでした。
等身大の言葉で綴られた文章に触れていると、街中ですれ違った「誰か」の生活を垣間見ているような感覚になります。
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おともには、きなこみるくクッキーを選びました。
さくさくと軽い食感にまるい甘さが、都会での暮らしを癒してくれます。
4.『生活の発見』ローマン・クルツナリック(フィルムアート社)
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「愛について」「家族について」「感情移入について」「お金について」「死生観について」など12の章からなり、それぞれのテーマの歴史を掘り下げながら今をどのように生きていけばよいかのヒントを提示してくれる一冊です。
「家族について」の章では「東アフリカのヌエル族は食べることを(排泄行為と同じように)恥ずかしい行為とみなす考え方が昔からあり、結婚して最初の数週間、夫は妻と一緒に食事をすることがない」、「バヌアツでは、上流階級の男性たちが集まり、家族と一緒ではなく、彼らだけで料理をし食べる」と書かれていて、西洋文化の歴史をたどると家族と食事をすることは普通ではなかったとか。
あたりまえなことって、過去や未来から見たらびっくりするようなことだったりするんですよね。
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この本は、おいしいショートブレッド チーズ胡椒と一緒に。
チーズよりチーズらしい味がして、絶妙な塩気と隠れ気味の胡椒がいいアクセントになっています。
チーズって歴史っぽい味がするので、この本のおともにふさわしいなと思ったおやつです。
5.『銀河の片隅で科学夜話』全卓樹(朝日出版)
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まるで文学作品を読んでいるような、うっとりとした詩的なリズムの文体と美しい挿絵。
科学に関する書籍はいつも面白そうだなと手に取るのですが、購入前に少しぺらりとページをめくってみると、難しい数式がずらり。
わ、難しそうだ……パリン(心が砕ける音)……。
でもこの本は違いました。なんと数式の解説が出てこないんです。
どの章も15〜20分で読める長さで、理系科目がオール1だったわたしでも理解できるくらい優しい表現が使われているため、ぜひ文系の方も身構えずに本をひらいてくださいね。
中学生のときに出会いたかった本だなあ。
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こちらには小粒プチ揚げもち 黒糖をおともに。
プチ揚げもちがだんだん隕石のかけらに見えてきます。
宇宙も数学の世界もまだまだ知らないことがいっぱいありますね。
6.『某』川上弘美(幻冬社)
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ある日突然この世に現れた某(ぼう)。人間そっくりのかたちで、すきなときに男女どちらにも擬態できます。
自分をかたどるものって何だろう。見た目も性別も年齢もばらばらな人物に変化する某の描写を見ていると、今の自分がどういうものに影響を受けてきたのか、改めて考えさせられました。
そういえば中学の先生が「自我は14歳で確立する」って言ってたけど、たしかにその頃から大きく変わったことはないかもしれないな、と思い出したり。
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おともには黒糖くるみを。歯ごたえがあるのに少し食感がぐにゅっとしてて、いびつなかたちのくるみを見て、某のことを思い出しました。
ふわっと優しい黒糖の味わい。
7.『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』斎藤倫(福音館)
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「ぼく」と「きみ」との会話の中で触れられる詩と、新鮮な言葉の世界との出会い。
小さいころ、詩の授業が苦手でした。何で当たり前のことを言うんだろう、と。
でもそれは「詩」ではなくて、「言語」として読んでいたからなんだと思います。
詩には大人も子どもも関係ない、どんなひとも自由にしてくれるものだということを、教えてくれる一冊です。
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この本にはさつまいもチップス 塩をおともに選びました。
タイトルの「ぱちん」とさつまいもチップスの「ぱきん」とした食感の音が似てたからです。ふふふ。
8.『地上絵』橋爪志保(書肆侃侃房)
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“ I am a 大丈夫 ゆえ You are a 大丈夫 too 地上絵あげる”
この帯に載っている言葉、短歌なんです。
短歌って、こんなにのびのびとしていて、自由なんだ!ってびっくりしました。
ごきげんなひとの日記を読んでいるような、でもそこには普段自分が目にしている光景のはずなのに、そんな切り取り方をして見たことがなかったなとハッとするような。
暗記して、おまじないの言葉にしたい短歌ばかりです。
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この本には精米薄揚げ 甘醤油を。ふわっとした食感、じゅわっと広がるあまじょっぱい味。
橋爪志保さんの短歌をおやつで圧縮したら、こんなふうになるんじゃないかなと思いました。
今回ご紹介したのはすべて大人になってから購入した本でしたが、小さいころに読んだ本を改めて読み返すと、当時の印象がひっくりかえることがあります。
全然共感できないと思っていた主人公のお父さんに情がわいたり、主人公の心情描写に感情移入していたところが、もう少し俯瞰的に捉えることができたり。
「過去の自分と出会い直す」という意味では、昔読んでいた本も、いつもの景色をひっくり返してくれるきっかけを与えてくれるかもしれません。
おやつの時間がたのしくなる本との出会いが、みなさんにも訪れますように!
文=ひらいめぐみ
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