2021.04.17

おやつと、本と

snaq me

わ〜い!今月も届いた!と思っても、意識せずに食べていると、ゆっくり味わうのも忘れて気づいたらなくなってしまうおやつたち。

今月わたしの家に届いたおやつとともに、おやつ時間をより豊かにしてくれる本をご紹介します。

1.『季節の記録』SAKI OBATA(commune Press)
2.『Self-Reference ENGINE』円城塔(早川書房)
3.『宮沢賢治オノマトペ集』栗原敦監修 杉田敦子(筑摩書房)
4.『こといづ』高木正勝(木楽舎)
5.『サーカスの夜に』小川糸(新潮社)
6.『ここでのこと』谷川電話、戸田響子、小坂井大輔、寺井奈緒美、辻聡之、野口あや子、千種創一、惟任將彥、山川藍(ELVIS PRESS)
7.『世界をきちんとあじわうための本』山崎剛(ELVIS PRESS)


1.『季節の記録』SAKI OBATA(commune Press)

イラストレーター/グラフィックデザイナー小幡彩貴さんの作品集。

タイトルの通り季節ごとのワンシーンが描かれていて、誰かの日常を覗いているような気持ちになります。

季節が移り変わるころに過去の出来事を呼び起こされる感覚にも似ていて、ずっと手元に置いておきたい一冊。

この本のおともに選んだのは「おからビスコッティ 紅茶」。

ちょっと硬いのでびっくりします。気をつけてね。

ふわっと香るアールグレイの茶葉に、柔らかい甘さ。はかない味が、懐かしい記憶を思い出すときのようです。

あったかい牛乳と一緒に食べたいなあ。

2.『Self-Reference ENGINE』円城塔(早川書房)

円城塔さんのデビュー作です。

普段文章を読むとき、頭の中で映像に変換しながら物語の世界の奥へと進んでいきます。でも今自分がどこにいるのか、周りがどうなっているのかが見えてこない。

そんな不安定なぐらぐらの世界のまま歩みを進めていくしかない感じが新鮮でした。

小説という表現方法を、肯定している作品だなあ。

こちらには「ぎゅっとやさしいバウム」を。よく見てみてください。

表紙がバームクーヘンみたいなんじゃない?!

幾重にも重なった層は、ひとつひとつの未知な設定が重なっているこの本のようで、内容は半分も理解できないけどこのバウムクーヘンがおいしいからいっか、と思わせてくれます。

しっとりして優しくて。分からないことがあってもいいのよ、と許してくれているみたい。

3.『宮沢賢治オノマトペ集』栗原敦監修 杉田敦子(筑摩書房)

『注文の多い料理店』を教科書で初めて読んだとき、こわいお話なのになぜかリズミカルな音色が響いていて、ぞわぞわとしながらつい引き込まれてしまうのが不思議でたまりませんでした。

宮沢賢治の作品には、辞書よりもたくさんのオノマトペがあるんじゃないかと思います。実際どうなんでしょう。

本書では、右ページにオノマトペ、左ページに作品でオノマトペが使われる文の引用と説明を掲載しています。

わたしの一番のお気に入りは「ぺかぺか」。ぱらぱらっとめくって好きなところから読めるので、ちょこっと休憩したいときにぴったりです。

こちらのおともにはスイートポテトクッキーを選びました。

口の中でさくさく、ほろほろ。本のページをぱらぱら、ぺらり。軽快な食感と舌触りが心地いいクッキーです。

4.『こといづ』高木正勝(木楽舎)

音楽家/映像作家である高木正勝さんのエッセイ集。『おおかみこどもの雨と雪』『バケモノの子』『未来のミライ』の映画音楽を手がけられていて、CM音楽を聴いたことのある方も多いかもしれません。

高木さん、学生のころからとってもすきなんです。自然が歌うようにピアノを弾く方で、何度かコンサートに行ったことがあるのですが、耳だけではなく心にまで届く音楽に感動したのを覚えています。

帯に書かれた吉本ばななさんの推薦文にこの本の魅力が表されているので、これ以上ほかに言い当てる言葉が浮かばないくらい。

いろんな生き物の息遣いが聞こえてくるエッセイです。都会で暮らしている人、忙しさに追われている人に届いてほしい一冊です。

本を読む余裕がないときは、高木さんの音楽も素敵なのでぜひ聴いてみてくださいね。

おともに選んだのは「精米薄揚げ 海老」。

いや〜、これもね、わたしすきなんです。基本的にあっさりした米菓って何でもすきなんですけど、これはさっくりしていて、口どけも良くて、何より袋を開けた瞬間広がる海老の香りの豊かさ!

食感の軽やかさが、高木さんの音楽みたいだなあと思いました。

5.『サーカスの夜に』小川糸(新潮社)

“両親の離婚でひとりぼっちになった少年。13歳の誕生日を迎え、憧れのサーカス団・レインボーサーカスに飛び込んだ。個性豊かな団員たちに囲まれて、体の小さな少年は自分の居場所を見つけていく。

この本の中で、綱渡りの練習をする主人公の心情に、こんな描写がありました。

“僕は、綱の上で十四歳になった。あれから、一年が経ったのだ。”

仕事をしながら、そういえば今日だったな、とデスクで過ごす誕生日。人生で初めてひっそりと誕生日を迎えたとき「大人になるってこういうことだったんだ」と思った瞬間と重なります。

そして、子ども扱いしないでくれる大人がいてくれたことのありがたさも同時に思い出しました。

この本には「ショコラ和三盆」をおともに。懐かしい甘みから突然「こんにちは〜!」と現れてくるチョコ味。

優しく接しつつもおせっかいなくらい少年を気にしてくれる団長みたいな味です。

6.『ここでのこと』谷川電話、戸田響子、小坂井大輔、寺井奈緒美、辻聡之、野口あや子、千種創一、惟任將彥、山川藍(ELVIS PRESS)

愛知県に縁のある9人の歌人が、県内の様々な場所を想いながら作歌したアンソロジー歌集。

装丁の美しさもさることながら、知らない地名と誰かがいる景色が想起されるそれぞろの短歌もまた素敵なんです。愛知県に住みたくなっちゃうよ。

お気に入りの短歌は、谷川電話さんの一句。

恋人にはならないと断言した後に「水族館に怪獣はいた?」

この本のおともは「おかき揚げ チーズ」にしました。

ひとつぶが大きくて「うれしい〜!」って声が出ちゃいます。わあ、チーズが濃いな〜〜。

ミクロとマクロの視点を行き来する短歌を読みながら、おかきとしてのおいしさと、チーズのぎゅっとした濃厚さを行ったり来たりしたくなります。

またいろんなフレーバーが入ったおかきBOX、販売してほしいなあ。

7.『世界をきちんとあじわうための本』山崎剛(ELVIS PRESS)

人類学者を中心メンバーとするリサーチ・グループ「ホモ・サピエンスの道具研究会」による美術展のカタログとして2013年に制作された一冊の本。

世界は、あたりまえのようにあって、すでに誰もがあじわっているけれど、それをきちんとあじわおうとすれば、いつもとは違った「何か」が必要です。本というものは、そうしたきっかけをあたえてくれるもの。この本は、どのページを開いても、特別なものは何もなく、呼吸や靴や掃除といった、ありふれた日常の話あるだけですが、世界とはそのようなものです。

「はじめに」で著書の山崎さんは、この本のもととなった展覧会の企画の経緯をこのように記しています。

本に登場するトピックは、特別な日に起こるようなめずらしいことについてではなく、あたりまえに受け止めている行動や目の前に広がる世界についてのこと。

これを読み終えたとき、「世界に身を置きながら、なんてもったいない受け止め方をしていたんだろう」と、思わずぴっと背筋が伸びました。

この本のおともには2種類のおやつを。まずひとつがFrozen Potato Block。宝石の原石のように美しい見た目で、口に入れた瞬間しゃりっと鳴る音にびっくりするかもしれません。

こんな食感の食べものがあるんだ!って。

もうひとつは「さつまいもけんぴ 塩」。きりりと効いてる塩がFrozen Potato Blockとも違うさつまいもの表情を見せてくれています。

塩気が甘さを引き立てるって不思議ですよね。同じ素材を使われたおやつを比較するだけでもそれぞれの違いがあって面白いなあ。


小学生のころ、本をまったく読まない子どもでした。図書カードはいつも真っ白、一番苦手な教科は国語。

その後中学に入り、持病で運動部に入るのを諦めなければならなかったとき、自分の居場所がないわたしを救ってくれたのは、学校の図書室でした。

本を読むということは、数少ない「ひとりであることを肯定できる行為」だと思っています。

そういえばsnaq . meは読書の時間や、誰とも一緒にいないひとりでいる時間にも寄り添ってくれるようなおやつかもしれないな、と気づきました。

大勢で分け合うには少なくて、ひとりでやけ食いしてしまうには優しくて。

本を読むときのおともに何かあったらな、と思うとき。きっと心強い強い味方になってくれます。

文=ひらいめぐみ


この記事をシェアする

snaq me

最新のよみもの